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第 102 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ

日 時:11月 8日(木) 午前 9:30
場 所:低温研新棟 3階講堂

発表者:新井 健一郎 (極域大気海洋学講座 D2)
題 目:大阪平野に出現する降水システムの観測的研究

山崎先生は仕事の都合により延期になりました。

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大阪平野に出現する降水システムの観測的研究 (新井 健一郎) 発表要旨 :

  
 日本の豪雨地帯は、尾鷲や鹿児島のように主に外海沿いに分布しており、瀬戸 
 内海周辺などの内陸部は比較的少雨である。しかし大阪平野では、本州内陸部 
 にもかかわらず時折集中豪雨が発生する。この地域は一大人口密集域であり、 
 防災上の観点からこのような降水現象の解明は重要であるが、アメダスなどの 
 通常の気象観測データでは海上や上空の気流分布が分からず、局地的降水現象 
 の立体構造の把握は不十分であった。 
  
 そこで、我々のグループでは、大阪平野を一望する山地にドップラーレーダを 
 設置し、1998年から2000年まで夏期を中心に観測を行なった。今回は、大阪平 
 野の地形環境と降水システムの形成との関係について報告する。 
  
 まず、大阪府北部・淀川流域に沿って停滞したレインバンドの観測事例を紹介 
 する。この領域では「淀川チャネル型大雨」と呼ばれる局地的短時間強雨現象 
 が年に数回見られるが、今回観測された現象は、停滞位置が若干北寄りではあっ 
 たがこのタイプと考えられる。デュアルドップラーレーダ解析の結果、上昇流 
 は主にバンドの軸の北側に分布しており、六甲山地・北摂山地による強制上昇 
 あるいはこれらの山地を乗り越えた寒気との収束が示唆される。 
  
 次に、大阪平野で急発達した雷雲の観測事例を見る。この雷雲は、奈良県北部 
 で日中に形成されたレインバンドの先端部が、大阪平野に侵入した直後に発達 
 した。観測データから、この雷雲の発達の理由として、奈良盆地から生駒山地 
 にかかったレインバンドからの冷気流が大阪平野側に流れ出し、太平洋側から 
 紀淡海峡を通って大阪平野に滞留した暖湿気塊の下にもぐり込み、大気状態が 
 急速に不安定となったことが考えられる。 
  
 これらの観測結果は、大阪平野と周辺地域とを隔てる山地の存在が降水システ 
 ムの形成位置や発生タイミングに大きく関与していることを示唆している。 
   

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連絡先

豊田 威信 @北海道大学大学院地球環境科学研究科
大気海洋圏環境科学専攻 物理系
mail-to:toyota@lowtem.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-7431