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第 100 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ
日 時: 10月 18日(木) 午前 9:30
場 所:低温研新棟 3階講堂
発表者:岩本 勉之 (極域大気海洋学講座 D3)
題 目:オホーツク海南西部の乱流フラックスと海氷との関係
発表者:山中 康裕 (気候モデリング講座 助教授)
題 目:海洋物質循環に関するモデリング−1990年代から2000年代へ−
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オホーツク海南西部の乱流フラックスと海氷との関係 (岩本 勉之) 発表要旨 :
高緯度域での気候システムを理解する上で、海氷上での大気海洋間の熱輸送量 を把握する事は重要である。特に氷縁域では海氷が薄く、また海氷分布の季節 変動や年々変動が大きいので、熱輸送量の時間・空間分布の変動も大きい。そ こで、典型的な氷縁域であるオホーツク海南西部においてラジオゾンデ観測を 行ない、乱流フラックスの見積りを行なった。その結果、この海域での冬季の 乱流フラックスは海氷密接度の大小および寒気の吹き出しの強弱によって、 およそ 200W/m2 から 30W/m2 (上向き正) 程度の変動を示していることがわかっ た。今回はこれらの結果について発表する。
海洋物質循環に関するモデリング−1990年代から2000年代へ− (山中 康裕) 発表要旨 :
前半は最新のIPCCレポート(IPCC TAR)から2つの話題を紹介する。IPCC TARで、 新たに注目された炭酸カルシウムの生産比について考えてみる。海洋化学の代表 的な教科書である"Tracers in the Sea"(Broecker and Peng, 1982; BP82)では、 表層−深層間の全炭酸と全アルカリ度の濃度差に注目し、生物生産された炭酸カ ルシウムは、沈降粒子中有機炭素の約25%と説明され、非常に明快なので、疑い もなく広く支持されてきた。一方、(おかげで投稿から査読者とのやり取りに約2 年半も費やした)私のD論はYamanaka and Tajika(1996; YT96)では、約8%程度と した。その違いは、BP82では表層−深層間の濃度差をそのまま有光層での生物生 産比と見なしたのに対し、YT96では、水温躍層以浅で多くの有機物が溶けてしま うので、その点を考慮したことによる。現在のモデル研究では、私の値が標準と され、IPCC TARでも支持されている。 IPCC TARでは、我々を含む10グループによるOCMIP(Ocean Carbon-cycle Model Intercomparison Project)により見積もられた海洋による二酸化炭素の吸収量が 採用されている。このことを紹介する。 後半は海洋生態系モデルの最近の我々の取り組みについて紹介する。生物生産 は、海洋物質循環の主役である栄養塩と炭素循環の原動力であるため、生態系の 振舞いは海洋物質循環に影響を決定的に及ぼす。地球科学的な視点あるいは物質 循環の視点から海洋生態系モデルを用いている研究はまだ数少ないように思える。 我々は、生態系モデルと物質循環の視点を組み合わせ、いろいろと実験をしてゆ くうちに、海洋生物学における基礎的概念を数多く修正しなければならないに気 づきつつあるので、これを紹介してゆく。 (1)光合成は、栄養塩が半飽和定数の数倍程度で十分に栄養塩制限されており、 決して半飽和定数以上が豊富なわけではない。数倍程度で初めてブルームを 起こし、数倍以下になるとブルームが終了する。 (2)珪藻春季ブルームは混合層が深くなって行く時期に準備されている。光合成は 植物プランクトンに比例するが、捕食は、動物と植物プランクトンにともに比 例するので、混合層が深くなり希釈されていくと、光合成が捕食を上回り、植 物プランクトンは、濃度としては減少してゆくが、総量としてはむしろ増える。 (3)植物プランクトンが成育する数10mから100mの間に、アンモニアの半分程度は、 硝酸に硝化されてから生物生産に用いられる。このことは、光合成の際に、硝 酸とアンモニアの取り込み比(f比)を用いると、新生産を過大評価しているこ とを示す。 (4)沈降粒子中のケイ酸塩と硝酸塩の比(Si/N比)は、Nがアンモニアを経て再生産 されることで大きく変動する。 (5)沈降粒子中のδ15Nの季節変動は、光合成に使われるアンモニアのδ15Nを 強く反映する。 などを紹介した。
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