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大気海洋圏物理系 M2所信表明セミナー(第2回)のおしらせ

日 時:2000年 6月 8日(木) 午前 9:30 〜 12:00
場 所:地球環境研究科管理棟 2F 講堂

発表者:三山 亜希子 (大循環力学講座)
題 目:冬季の北半球下部成層圏におけるオゾン減少と力学場との関連について

発表者:横関 奈保人 (大循環力学講座)
題 目:赤道域における大気波動解析

発表者:小島 至 (気候モデリング講座)
題 目:気候変動における太陽活動の影響

発表者:星野 圭志 (気候モデリング講座)
題 目:最終氷期以来の北極海の淡水・熱収支の変遷

発表者:久保田 敬二 (地圏環境科学専攻)
題 目:気候変動が パタゴニアの気象に及ぼす影響

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冬季の北半球下部成層圏におけるオゾン減少と力学場との関連について (三山 亜希子) 発表要旨:

   北半球では、プラネタリー波の振幅が大きく南半球の極夜ほど温度が低くな 
 らないため、南半球のような大規模なオゾン減少は起こりにくいと思われてき 
 た。 しかし、90年代に入り北半球の中・高緯度でもオゾンの減少が報告され 
 ており、その中でも1996-97年の減少は記録的なものであった。 
   このオゾンの減少を考える上で、極夜の低温化で生成する極成層圏雲  
 (PSCs) の存在が重要視されている。極域に太陽が差し込む頃、PSCs 上で発生 
 する不均一反応により不活性な塩素化合物が活性な塩素に変換し、塩素による 
 オゾンの破壊サイクルが起こると考えられている。したがって、オゾン減少に 
 は極域に太陽が差し込み始める冬から春にかけての温度場が密接に関係してい 
 ることが予想される。 
   このようなことから、今後の研究では、長期的 (70年代〜) にみたオゾン量 
 の変動と力学場の年々変動の関係を明らかにするために、北半球と南半球の比 
 較も含めて解析・検討を行いたいと考えている。 
  

赤道域における大気波動解析 (横関 奈保人) 発表要旨:

 赤道域には、中高緯度には見られない固有の性質を持つ波が存在することが知 
 られている。周期の短い重力波をはじめ、中には数日〜数十日という時間スケー 
 ルを持った波も存在し、準二年周期振動の運動量輸送に大きな役割を果たして 
 いることを示唆する研究結果もある。 
  
 今回の発表では、まず赤道域にみられる波動の特殊性の背景となる理論につい 
 て触れる。その次に、過去の研究観測で見られたケルビン波や慣性重力波など 
 について、線形波動理論に基づいた解析を行っている Tsuda et al.(1994) を 
 中心にした赤道波についての先行研究のレビューを行い、最後に自分がこれか 
 らの研究予定を発表する。 
  

気候変動における太陽活動の影響 (小島 至) 発表要旨:

  太陽放射エネルギーは太陽活動に伴い刻々と変化していることが知ら 
 れており、11年周期では約0.1%、数百年スケールではもっと大きな変動 
 をしていると考えられている。その変動に伴い地球気候も何らかの影響 
 を受けているはずである。 
  本研究では、GCMを用いて太陽放射のスペクトル分布的変化と全量的変 
 化に対する地球気候のレスポンスを調べることを目的とする。 
  

最終氷期以来の北極海の淡水・熱収支の変遷 (星野 圭志) 発表要旨:

   過去の環境の解明は現在の環境システムを理解する上で、また将 
 来の環境を予測する上でも非常に有用な手段である。そこで今回北 
 極海に注目し、最終氷期以来の水(淡水)収支・熱収支の変遷を明ら 
 かにすることを試みる。 
   現在の北極海は淡水の出入りが盛んで、それが北大西洋の熱塩循 
 環の沈み込みの盛衰に影響力をもつということで重要視されている。 
 一方熱の面でも南から水を介して運ばれてきたものが大気へでていっ 
 ていると考えられることから、大気の動態に影響を与えるだけの力 
 ももっているといえる。このような地球の気候に対する影響力をも 
 つ淡水・熱収支が最終氷期以来どのように変化してきたか、現在と 
 比較しながら明らかにしていこうと思っている。 
  

気候変動が パタゴニアの気象に及ぼす影響 (久保田 敬二) 発表要旨:

 南米南部のパタゴニア地方は、年降水量が海岸地域で2000mmから4000mm、山岳 
 地域では10000mmにたっするといわれる、世界でも有数の多雨地帯である。北 
 部では冬に雨が多くなるのに対 して南部では夏または年間を通して雨が多く 
 なる降水の季節的 な特徴をもっている。また経年変動が非常に大きく、エル 
 ニー ニョ、ラニー二ャなどの現象の影響が大きく現れるといわれて いる。特 
 異的に雨が多い年または少ない年の大気循環、海面水 温などを解析すること 
 により、その背景を調べる。 
  

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連絡先

石渡 正樹 @北海道大学大学院地球環境科学研究科
大気海洋環境科学専攻気候モデリング講座
mail-to:momoko@ees.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-2359