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第 91 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ
日 時:2001年 1月 18日(木) 午前 9:30 − 12:00
場 所:低温科学研究所 新棟 3階講堂
発表者:清水 大輔 (極域大気海洋学講座 D3)
題 目:冬期にオホーツク海北西部で作られる水塊の振舞いに関する数値モデルを用いた研究
発表者:庭野 将徳 (大循環力学講座 D3)
題 目:光化学的に長寿命な微量成分から見る赤道下部成層圏の子午面循環
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冬期にオホーツク海北西部で作られる水塊の振舞いに関する数値モデルを用いた研究 (清水 大輔) 発表要旨 :
オホーツク海北部陸棚域では、北太平洋において最も深く ventilation する 水塊が作られる。この水塊は、冬期の強い北西風による海氷生成に伴う brine rejenction によって作られる。こうしてできた水塊は、NPIW (North Pacific Intermediate Water) のソースの一つと考えられている。(Watanabe and Wakatsuchi, 1998) そこで、冬期に北西部陸棚域で生成された陸棚水が、どのように陸棚から流れ 出し、どのように周囲の水と混ざり、広がっていくのかを調べるために数値計 算を行なった。 数値モデルとして sigma coordinate を特徴とする POM (Prinston Ocean Model)を用いた。モデルの領域はオホーツク海全域とし、他の海との海水交換 のない閉じた海を考える。海面フラックスとしては、ECMWF Re-Analysis の風 速データから求めた風応力と、渡辺修論(2000) を参考に決めた理想化された 塩分フラックスを用いた。 数値計算は、次の三つの場合を考える。まず、(1)年平均気候値風応力のみを あたえ、風成循環を計算する。次に、(2)塩分フラックスのみをあたえ、密度 流を計算する。最後に、(3)風応力と塩分フラックスの両方を与え、より現実 的な計算を行なう。それぞれの場合について解析結果を示す。
光化学的に長寿命な微量成分から見る赤道下部成層圏の子午面循環 (庭野 将徳) 発表要旨 :
赤道成層圏は, 準二年周期振動 (QBO) や 半年振動 (SAO) など 赤道特有の現象が見られる領域である. QBO や SAO は赤道域から 冬半球極域への物質輸送経路を変化させるため, 冬季極成層圏で 観測されるオゾンホールなどの現象を考える上でも, QBO や SAO に ともなう子午面循環の変動を理解することは重要な課題である. 同領域における物質輸送の研究は主にモデルを用いて行なわれてきたが, 最近, モデルにおける輸送の効果がモデルごとにばらばらであることが 明らかになってきた. また, 中層大気の平均子午面循環は, 観測データ から波に伴う運動量フラックスや放射を計算することで間接的に求めら れるが, 同領域は放射バランスが微妙な領域であり, その子午面循環 変動はまだよく理解されていない状況である. そこで, 人工衛星 UARS 搭載の測器 HALOE が 1991-2000 に観測した大気 微量成分データを使用し, 微量成分分布の変動から赤道下部成層圏における 平均子午面循環を推測することを試みた. 解析には, 同領域で光化学的に 寿命の長い水蒸気, メタン, オゾン, そして中層大気で保存される量である 水蒸気に 2倍のメタンを加えた量を使用する. 今回は, 赤道域における 上昇速度や赤道域から中緯度への輸送に見られる季節変動と QBO 変動の両成分について解析した結果を紹介する予定である.
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