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第 87 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ

日 時:2000年 10月 26日(木) 午前 9:30 − 12:00
場 所:低温科学研究所 新棟 3階講堂

発表者:初鹿 宏壮 (気候モデリング講座 D3)
題 目:客観解析データから見た熱帯対流圏界面の年々変動

発表者:谷口 博 (気候モデリング講座 D3)
題 目:東西一様基本場に於ける慣性不安定モードの Lamb パラメータ依存性(2)

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客観解析データから見た熱帯対流圏界面の年々変動 (初鹿 宏壮) 発表要旨 :

  
 対流圏界面の季節変動については前回のEOASセミナーで発表した。対流圏界面 
 は北半球の冬に全体的に温度が低く、夏に高い。それに対応して高度が冬に高く 
 夏に低いという季節変動を見せている。このことは、Downword Controlの原理 
 に良く一致しており、近年の衛星による水蒸気観測における季節変動の原因となっ 
 ている。対流圏界面を横切る水蒸気の量を見積もる上で、対流圏側からの突き上 
 げる効果と成層圏側からの吸い上げる効果の両方が重要である。それらの効果が年々 
 に変動する場合、結果として対流圏界面のレコーダーは少なからず影響を受ける 
 はずで、対流圏界面自体がどのような年々変動するかを調べることが重要になって 
 くる。 
  
 今回は成層圏側からの影響として熱帯50hPaの帯状平均東西風、対流圏側から 
 の影響としてNino3のSSTを用い、対流圏界面変動を調べてみた。 
 データとしてはGISST, NCEP/NCAR Reanalysis, ECMWF, 及びAGCMのOutputを使用。 
 対流圏界面の温度、高度、飽和水蒸気混合比の年々変動について発表する予定。 
  

東西一様基本場に於ける慣性不安定モードの Lamb パラメータ依存性(2) (谷口 博) 発表要旨 :

  
 赤道域上部成層圏では, 東西非一様な構造をもつ慣性不安定擾乱が存在する 
 (Hitchman et al.,1987; Hayashi et al.,1998, Smith and Riese(1999)).  
 一方, 金星や木星など他の惑星でも慣性不安定の存在が示唆されており   
 (Allison et al.,1994), 東西風の維持形成に慣性不安定の影響が寄与してい 
 るという議論がある(Allison et al.,1995).  
  
 慣性不安定に関するこれまでの理論的考察では, 東西一様擾乱を扱ったもの 
 (Stevens,1983),  東西非一様擾乱を扱ったもの(Dunkerton,1983), 東西一様, 
 非一様擾乱について, 回転と鉛直構造の効果を調べたもの(谷口, 石渡,1999) 
 等がある(いずれも東西一様基本場).   
  
 しかし, Dunkerton(1983)が指摘した東西非一様擾乱をそもそも慣性不安定擾 
 乱と見なして良いかは, 明らかではない. また, 東西一様擾乱の不安定条件 
 (Stevens,1983)を非一様擾乱にまで拡張して良いかどうか, さらに, 東西一 
 様, 非一様擾乱の選択メカニズムは未解決である.      
  
 以上の問題を明らかにし慣性不安定モードの物理的解釈を進めるため, 本研 
 究では, 線形シアー流を基本場とする線形安定解析により赤道β平面に於け 
 る不安定モードの解析を行ってきた. その結果, Lamb パラメータが 16 以上 
 で慣性不安定モードが存在し, 16 以下では純粋な慣性不安定とは異なる構造 
 の不安定モードが存在すること, Stevens(1983)の不安定条件は慣性不安定の 
 十分条件ではないことが明らかになった.  
    
 今後は, 残された問題について以下の方針で研究を進めていく予定である. 
  
 (1) Satomura(1981a)のエネルギー解析を行い, 東西非一様モードのメカニズ 
  ム, 東西一様モードとの類似性をエネルギー論で明らかにする(進行中).   
  
 (2) Cairns(1979)による中立波の共鳴という考えに基づいた不安定モードの 
  解析(Satomura(1981a), Kubokawa(1986), Hayashi and Young(1987), 
  Iga(1993,1997))を行い, 慣性不安定モードの物理的解釈を進める(進行中).  
  

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連絡先

石渡 正樹 @北海道大学大学院地球環境科学研究科
大気海洋圏環境科学専攻大循環力学 / 気候モデリング講座
mail-to:momoko@ees.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-2359