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第 82 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ

日 時:2000年 4月20日(木) 午前 9:30 〜 12:00
場 所:地球環境研究科管理棟 2F 講堂

発表者:柏野 祐二 (海洋科学技術センター)
題 目:フィリピン海南部における海洋循環 −観測・モデル研究−

発表者:川島 正行 (極域大気海洋学講座 助手)
題 目:スコールライン型対流システムの周期的変動に関する数値実験

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フィリピン海南部における海洋循環 −観測・モデル研究− (柏野 祐二) 発表要旨:

   フィリピン海南部における海洋循環を1992年〜1996年にかけて行っ 
 た測線観測、及びタラウド諸島−モロタイ島(どちらもインドネシア)に19 
 94年2月から1995年6月にかけて行った係留観測の結果を用いて研究し 
 た。また、その解釈のために海洋科学技術センターにて開発した全球高解像度 
 モデルの結果も併せて用いた。 
  これらの成果の中で最も重要なものは、この海域の海洋循環(水塊分布と海流構 
 造)を明らかにしたことである。また、係留観測結果はこの海域において約50日の 
 季節内変動が卓越していること、季節風の変動に応じた海洋変動が見られることを示 
 した。中でも、季節内変動はMJOに関連して起こっている可能性も否定できない 
 が、おそらくこの海域の渦の活動に伴って起こっている。モデルの結果は観測から得 
 られたこの海域の海洋循環及びその変動をよく再現しており、特にミンダナオ渦・ハ 
 ルマヘラ渦がインドネシア通過流に影響を与えていることを示唆したことが興味深 
 い。 
  

スコールライン型対流システムの周期的変動に関する数値実験 (川島 正行) 発表要旨:

 メソスケールの対流性降水システムはしばしば数時間の周期で発達, 
 衰退を繰り返すことが観測や数値実験により示されている。 
 本研究では2次元の雲解像モデルによる数値実験を中心にして、 
 スコールライン型降水系の数値実験を行い数時間周期の変動が 
 生じるメカニズムについて調べた。 
  
 環境風の下層シアが十分弱い場合,あるいは十分強い場合は準定常な 
 降水系が生じたが、その間の範囲では数時間の周期で降水系を構成 
 する複数の雲が組織化され,後方に大きく傾いた単一の雲(メソスケ 
 ールセル)が生じた。モデルで得られた各種物理量の時間変動の解析 
 から、下層の雲から切離されたメソスケールセルとその周囲の擾乱は 
 後方に傾いた等位相面をもつ内部重力波の構造をもち、後方に伝播す 
 るこの内部重力波と下層の雲との相互作用により周期的変動が生じる 
 ことが示された。 
  
 また、降水系の変動の周期は励起される内部重力波の周期により決まるが、 
 その周期は熱源であるメソスケールセルの傾きにほぼ比例する。また、 
 メソスケールセルの傾きは下層のシアの強さと上昇流の得る浮力との 
 バランスで決定されることが示された。 
 擾乱の下降流が下層の雲の上空にある間は、積乱雲の発達が抑制されるため、 
 降水系は複数の積乱雲からなるマルチセル型の構造を呈する。擾乱が 
 後方へ伝播し、上昇流の位相が下層の雲の上空に到達すると、雲が発達を 
 始め、再びメソスケールセルが形成されることが分かった。 
  

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連絡先

石渡 正樹 @北海道大学大学院地球環境科学研究科
大気海洋環境科学専攻気候モデリング講座
mail-to:momoko@ees.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-2359