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第 78 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ
日 時:2000年 1月13日(木) 午前 9:30 〜 12:00
場 所:低温科学研究所 2F 大講義室
発表者:岡田 直資 (気候モデリング講座 D3)
題 目:部分的に海氷に覆われた海域における対流の数値実験
発表者:荒井 美紀 (気候モデリング講座 D3)
題 目:ブロッキング現象の維持に対する総観規模擾乱の役割
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部分的に海氷に覆われた海域における対流の数値実験 (岡田 直資) 発表要旨:
部分的に海氷に覆われた海域では、大気からの冷却を受けると、氷のある領域 とない領域で海氷生成の速度が異なるため、水平方向に非均一な負の浮力フラッ クスが海洋表層に加わる。この際に生ずる対流は、海氷の分布構造や移動速度 によってその構造が異なることが予想される。本研究では、非静水圧 3次元モ デルを用いて数値実験を行い、この対流過程の違いについて調べている。 北極海での陸棚での海氷生成を想定した数値実験を行った結果、対流の構造が フォーシングの水平スケールの構造の大小によって、特にプリュームと呼ばれ る構造が形成されるほど十分な大きさがあるかどうかによって、異なることが わかった。また、重い水塊の生成される量が水平スケールが大きいほど大きく なり、対流過程の異なりがその違いをつくり出す要因の一つであることがわかっ た。 この結果は、ブラインの排出によってできる高密度水の密度は、1つ 1 つの開 水面(ポリニアやリード)の大きさに依存することを示唆している。
ブロッキング現象の維持に対する総観規模擾乱の役割 (荒井 美紀) 発表要旨:
対流圏中高緯度で観測されるブロッキング現象は、一週間以上の長時間に渡っ て持続することが知られている。また、その際の気圧場の形状は、北に高気圧、 南に低気圧となる南北双極子構造であることが多い。このような南北双極子構 造を持つ、渦度方程式の非粘性の定常解であるモドン解がそのモデルとして提 示されている。ここでは、西風中にモドンが存在できるβ-平面等価順圧渦度 方程式を用いてブロッキング現象へのモドン解の適用を考える。 モドン解の渦度場に相当する局所的な強制を与えた場合に、エクマン粘性係 数を追跡パラメータとして定常解の分岐を調べた。その結果、モドン解と帯状 流の卓越する解の二つの定常解が安定に存在することが分かった。 次に、この二つの定常解に対する総観規模擾乱の役割を調べるため、総観規 模擾乱を模した擾乱の強制を与え、これが二次的に誘起する流れの場を求めた。 その結果、基本場としてモドン解を取った場合と帯状流が卓越する解を取った 場合の双方で基本場を維持する構造を持っていることが分かった。すなわち、 時間平均でみた総観規模擾乱はそれぞれの定常解を維持していることになり、 ブロッキング現象の維持の説明が出来る。 また、特異値解析を行うことにより、こうした二次的な流れの形成には、与 える擾乱の性質にはあまり依存せず、それぞれ定常解である基本流固有の性質 であることが示された。 さらに、擾乱の変形と、分流場を維持するように作用する擾乱の渦度フラッ クスの発散場との関係について考察した、Shutts(1983)のeddy straining仮説 について検証した。この理論に基づきエンストロフィー方程式のバランスを計 算した結果、モドン解においてもeddy straining仮説は矛盾なく適用できるこ とが分かった。
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