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第 75 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ
日 時:1999年11月 4日(木) 午前 9:30 〜 10:30
場 所:低温科学研究所 2F 大講義室
発表者:二橋 創平 (極域大気海洋学講座 D2)
題 目:南極海における融解期と結氷期の海氷分布の関係
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南極海における融解期と結氷期の海氷分布の関係 (二橋 創平) 発表要旨:
南極海は代表的な季節海氷域である。衛星観測から、12月が海洋融解の最盛 期で、2月には海氷域のほとんどが消滅、そして3月下旬頃から結氷が始まる。 夏季の海氷域における熱収支解析によると、大気からの heat input が最大に なるのは12月であり、海氷表面ではほぼ収支0になるのに対し、開水面では100〜 150W/m**2もの net heat input があることが示される(二橋 修論)。この違い は、主に入射短波放射による。従って海氷の有無により、海洋上層中に与えら れる熱はオーダーが1〜2異なる。一方、12月は海氷分布の年々変動が最も大き い月でもあるので、この時期に大気から海洋上層中に与えられる熱は、年によ り大きく異なることになる。この熱の違いは、次の結氷期にも影響を及ぼす可 能性がある。つまり、融解期に海氷密接度が低い(高い)ほど、海洋上層へ与え られる熱が多く(少なく)なり、結氷を遅らせる(早める)。これは海氷−海洋結 合系におけるアイスアルベドフィードバック効果と言ってもよい。本研究では、 このような関係がみられるかを、人工衛星による海氷データを用いて調べた。 解析には、Nimbus-7 SMMR, DMSP SSM/I による月平均の海氷密接度データを 用いた。融解, 結氷期における各年の海氷の多少を知るために、密接度データ からアノマリーを各月毎に求めた。融解最盛期の12月と結氷期の4月における 海氷密接度のアノマリーを比較したところ、分布のパターンは年により異なる が、両者の空間分布は各年良く一致していた。このことを確認するために、20 年間のアノマリーデータを用いて融解期(12月)と結氷期(4月)の相関係数を求 めた。相関係数はほぼ全域で正で、ウェッデル海の南極半島付近から沖側と東 側の沿岸寄りの海域で0.6以上の大きな値になった。南極半島の西岸(ベリング スハウゼン海)やロス海の沖側でも、相関係数が0.6以上の値になった。この結 果は、有意水準99%以上で有意である。融解期に海洋上層に与えられた熱が結 氷期までに移流される効果を調べるために、上の解析で強い相関が見られた海 域で、12月と4月における海氷密接度アノマリーの空間的な相関を調べた。そ の結果、Weddel Gyre等の南極海のGyreに矛盾しなかった。 以上のことから、融解期における海氷の多少が、海洋上層へ与えられる熱の 多寡を生み、それが海に記憶されて、海氷が一度消滅した後、結氷期にも反映 されることが示唆された。
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