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第 74 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ

日 時:1999年10月 28日(木) 午前 9:30 〜 12:00
場 所:低温科学研究所 2F 大講義室

発表者:細田 滋毅 (極域大気海洋学講座 D3)
題 目:海洋大循環モデルを用いたモード水の形成、変動メカニズムの研究

発表者:谷口 博 (気候モデリング講座 D2)
題 目:東西一様基本場に於ける慣性不安定モードの Lamb パラメータ依存性

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海洋大循環モデルを用いたモード水の形成、変動メカニズムの研究 (細田 滋毅) 発表要旨:

  海洋亜表層から中層における現象や変動についての研究を行って 
 いる。亜表層の長周期変動は大気海洋相互作用において重要な役割 
 を果たし、またそれ自身多くの現象が隠されている。しかし、海洋 
 は大気と比べて特に内部の観測が少ないため、まだ十分解明された 
 とは言えない。そしてそれらを明らかにするには数値モデルを用い 
 た研究が有効である。 
  本研究は、OGCM(海洋大循環モデル)を用いて北太平洋の亜熱帯 
 循環系内でのモード水に着目し、その形成、経年変動を明らかに 
 することが目的である。ここでモード水とは、同じ性質を持つ水塊 
 が厚く存在しているものであり、北太平洋では、(西部)亜熱帯、 
 中央、東部亜熱帯モード水の3つの存在が知られている。ここでは 
 中央モード水と東部亜熱帯モード水に着目した。その結果、同じモー 
 ド水でも形成や変動に大きな違いがあることが示された。 
  
  ○ 中央モード水 
  形成:亜熱帯循環北西部で形成される深い混合層の front と密度 
 の outcrop line との交点から、低渦位水が亜表層へ沈み込むこと 
 によって形成されている(Xie et al.,1999)。 
  変動:気候シフト(1976-77)前後の水温変動に着目した。偏西風強 
 化による風応力変動に対する応答によりモード水領域に高温化が起 
 るが、一方同時に起る SST 低下による応答で低温化が生じ、両者 
 の効果がキャンセルされていることが示された。観測による水温時 
 系列データでも、これらの現象が裏付けられている。 
  
  ○ 東部亜熱帯モード水 
  形成:北太平洋東部には深い混合層が存在しない。このためこの 
 モード水の形成には海表面での密度分布が南北に開いていることが 
 重要である。さらにこの密度分布の形成には温度だけでなく塩分も 
 重要な要素であることが示された。 
  変動:このモード水領域はあまり大きな変動は存在しない。しか 
 し経年変動を見ると、密度の変動が非常に小さいにも関わらず温度、 
 塩分の変動は比較的顕著に存在し、しかも密度に対する効果を打ち 
 消し合うような変動をしている。これは、この領域が、東側が低温 
 低塩分、西側が高温高塩分という水塊の境界であるためと考えられ 
 る。 
  

東西一様基本場に於ける慣性不安定モードの Lamb パラメータ依存性 (谷口 博) 発表要旨:

 赤道域上部成層圏では, 東西非一様な慣性不安定擾乱が存在することが知ら 
 れている(Hitchman et al.,1987; Hayashi et al.,1998). 赤道域の慣性不安 
 定に関する理論的な考察においては, これまで主に東西一様擾乱が扱われて 
 きた(Dunkerton,1981; Stevens,1983). しかし, 実際の大気中で現れるよう 
 な東西非一様擾乱のメカニズムに関する議論はこれまであまり行なわれてい 
 ない.  
  
 一方, 金星や木星など他の惑星でも慣性不安定の存在が示唆されており 
 (Allison et al.,1994,1995), 惑星大気を想定した広いパラメータ空間での 
 考察も必要である. そこで本研究では, はじめに不安定モードのパラメータ 
 依存性, 東西非一様擾乱のメカニズムに関する考察を行なうことにした. 
  
 赤道β平面プリミティブ方程式を用いた線形安定論を行なった結果, 東西一 
 様基本場に於ける慣性不安定モードの東西波数は主に惑星の自転に大きく依 
 存し, 回転の効果が大きい程最大不安定モードの東西波数は大きくなること 
 がわかった(修士論文,1998). 昨年の発表では, 地球の自転角速度を用いた場 
 合, コリオリ項がモードの成長に寄与し, さらに自転角速度が増大した場合 
 には圧力傾度項とコリオリ項がバランスする傾向にあることを示した. 
  
 その後, 東西非一様モードの水平構造に関する解析を行なった結果, 振幅が 
 極大となる経度方向の個々の領域に於いて, 東西一様モードと同じメカニズ 
 ムで東西非一様な不安定モードが成長していることが明らかになった. 複数 
 の外部パラメ−タによる考察をさらにすすめ, モ−ドのパラメ−タ依存性を 
 統一的に理解するため, 今回の発表では無次元化した方程式系を用いて解析 
 した結果, さらに分散曲線から見た不安定モードの物理的解釈に関するこれ 
 までの結果をあわせて紹介する. 
  

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連絡先

水田 元太 @北海道大学大学院地球環境科学研究科
大気海洋専攻大循環力学講座
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