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第 69 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ

日 時:1999年 6月 24日(木) 午前 9:30 〜 12:00
場 所:地球環境科学研究科管理棟 2F 講堂

発表者:山中 康裕 (気候モデリング講座 助教授)
題 目:モデルによる白亜紀における海洋無酸素事変の再現

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モデルによる白亜紀における海洋無酸素事変の再現 (山中 康裕 ) 発表要旨:

 現在, 極域で冷却され表層水温が低くなり, 沈み込んで深層水を形成しているが, 
 現在より温暖な気候である白亜紀などでは, 低緯度で多く蒸発し表層塩分が高く 
 なり, 沈み込んで深層水を形成していたといういくつかの地質学的証拠がある.  
 また, 黒色の有機物に富んだ薄い縞が見られる層(black shale)が見つかっている 
 かる .当時の海底が無酸素状態になっていたと考えられることから, 海洋無酸素 
 事変(oceanic anoxic event, OAE)と呼ばれている. その成因には諸説あるが, 
 Herbert et al(1986)は, 堆積物を時間高分解能(約4000年)で解析することによっ 
 て, 約2万年間隔で間欠的に海洋無酸素状態が存在すること, 海洋無酸素状態の時 
 期と海洋生物生産が低い時期が一致することを示し, さらに, 日射量の変動のた 
 め(いわゆるミランコビッチ・サイクル)海洋循環が間欠的に停滞したためと推定 
 したが, 氷床がない時期にどのようなメカニズムで起こるのかは今後の課題とし 
 た. 
   簡単な海洋循環モデルと物質循環モデルを組み合わせたモデルを用いて, 無酸 
 素事変を再現することを試みた. その結果, 2つの定常解と1つの周期解という3つ 
 の様式の熱塩循環が得られた. 周期的な熱塩循環の場合には, 地質学的証拠と整 
 合的な海洋無酸素状態, 海洋生物生産, 海面水準のミランコビッチ時間スケール 
 の周期的状態が得られた. 

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連絡先

水田 元太 @北海道大学大学院地球環境科学研究科
大気海洋専攻大循環力学講座
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