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第 63 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ

日 時:1999年 4月 22日(木) 午前 9:30 〜 12:00
場 所:地球環境科学研究科管理棟 2F 講堂

発表1
発表者:鈴木 立郎 (極域大気海洋講座 D3)
題 目:大気の季節内変動が西部熱帯太平洋の warm water pool の平均場に与える影響

発表2
発表者:謝 尚平 (大循環力学講座助教授)
題 目:地球気候の対称軸はなぜ赤道からずれるのか

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(発表1の) 発表要旨:

   大気の季節内変動は赤道域において卓越した変動の一つであり、特に warm  
 water pool 上で活発であることが知られている。季節内変動がENSOスケール 
 に与える影響という点ではいくつかの研究がなされているがまだ完全には解明 
 されていない。Philander and Pacanowski (1981)は水平一様成層の赤道海洋
 に東西風の周期20〜50日変動をあたえ、東向きと西向きの赤道ジェットの非線
 形性による 違い( 東向ジェットのほうが西向ジェットに比べより深く、赤道
 に集中して いる)により時間平均場として東向きの流れができることを示した。
 また、Kessler et al.(1995)は海洋のケルビン波に伴う移流によるSSTの変化と
 大気の季節内変動との相互作用のメカニズムを簡単なモデルにし、1991−1992の 
 エルニーニョ時のwarm water poolの東へのシフトを説明した。しかし、季節内 
 変動が存在することにより平均場として warm water pool がどのような影響 
 を受けているかの研究はなされていない。本研究では海洋大循環モデルを用い 
 てこの影響を調べた。 
   warm water poolは季節内変動によって次の3つの影響を受けていることが分 
 かった。 
   1.東へのシフト 2.上層の冷却 3.温度躍層の深さの増加 
 熱の移流拡散方程式の各項を調べることにより 1は平均流速による熱移流の 
 効果 2は鉛直混合の効果 3はレイノルズフラックスの効果であることがわか 
 った。このうち大気に大きな影響を与えると考えられるwarm water poolの東
 へのシフトに関しては簡単な1.5層モデルを用いて説明できる。これはレイノ
 ルズストレス項による赤道への東向流成分の収束によるものである。 

(発表2の) 発表要旨:

   大気・海洋の運動は太陽放射によって駆動されている。年平均した太陽放射 
 が南北対称にも関わらず、降水量や風、また海洋の表層循環は赤道に対して強 
 い南北非対称性を成している。特に、熱帯収束帯(Intertropical 
 convergence zone、略して、ITCZ)と呼ばれる降水帯は東部太平洋と大西洋で 
 は、北緯10度付近に位置している。このような外力と応答特徴の不一致は長年 
 の謎であり、その鍵を握るのは地球上の海陸分布と大気・海洋間の相互作 
 用である。特に風速・蒸発・海面水温(wind-evaporation-sea surface 
 temperature、略して、WES)の間、正のフィードバックが働き、大陸分布の情 
 報を広大な太平洋に伝達する役割をしている。 
   セミナーでは、ハレ─の大西洋風系図を見せながら、この問題の歴史的根元 
 を探る。また、ITCZを南北振動させる気候変動にも触れる。 

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連絡先

水田 元太 @北海道大学大学院地球環境科学研究科
大気海洋圏環境科学専攻大循環力学講座
mail-to:mizuta@ees.hokudai.ac.jp / Tel: 011-706-2357