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第 52 回 大気海洋圏物理系セミナー のおしらせ
日 時:1998年 10月 15日(木) 午前 9:30 〜 12:00
場 所:低温科学研究所 2F 大講義室
発表者:谷口 博 (気候モデリング講座 D1)
題 目:東西一様基本場に於ける慣性不安定のメカニズムについて
発表者:牛山朋来 (極域大気海洋学講座 D3)
題 目:西部熱帯太平洋における雲対流の加熱分布について
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東西一様基本場に於ける慣性不安定のメカニズムについて (谷口 博) 発表要旨:
赤道域上部成層圏では, 正負の温度偏差が鉛直方向に重なったパンケーキ構 造が現れることがある(Hitchman et al.,1987; Hayashi et al.,1998). この 構造は, 中緯度のプラネタリー波により励起された慣性不安定によるものと 考えられている. 慣性不安定に関する理論的な考察においては, これまで主に東西一様擾乱が 扱われてきた(Stevens,1983 等). しかし, 実際にパンケーキ構造で現れる東 西非一様擾乱の東西波数がどのようなメカニズムで決まるのかという議論は これまであまりされてこなかった. 一方, 金星や木星など他の惑星でも慣性 不安定の存在が示唆されており(Allison et al.,1994,1995), 惑星大気を想 定した広いパラメータ空間での考察も必要である. そこで本研究では, 不安 定モードの東西波数のパラメータ依存性について考察を行なうことにした. 線形化した赤道β平面プリミティブ方程式を用いる. 摂動は鉛直方向に波数 m のモード展開を行ない, 東西波数 k の水平成分のみを考える. 東西一様 順圧基本場(線形シアー, 東・西風ジェット)を与え, 線形安定論を行った. βが大きくなると, 最も不安定なモードの東西波数は大きくなることがわかっ た. その理由について考察するため, 方程式系の各項の大きさを調べてみた. 南北方向の運動方程式では, βが小さいうちは, 不安定化効果を持つコリ オリ項が卓越しモードの成長に寄与している. 移流項の大きさは比較的小さい. これに対してβが増大した場合には, 安定化効果を持つ圧力傾度項が増大し, コリオリ項と相殺するようになる. その結果, 成長率は『東西波数×基本場 の東西流速』で決まることが示唆された. つまりβが増大した場合には, 東 西波数が大きい程不安定になりやすいことになる. 基本場をジェットにした 場合には, 最大成長率モードの波数分布は, 線形シアーの場合の結果をβ方 向にずらしたものとなる. しかし, 基本場を変えた場合でもやはり最大成長 率モードの東西波数はβと共に増大する.
西部熱帯太平洋における雲対流の加熱分布について (牛山朋来) 発表要旨:
西部熱帯太平洋は熱帯の中でも特に海水面温度が高く、雲対流活動が活発な地 域である。雲対流活動はその莫大な潜熱放出により、大気大循環に重要な影響 をおよぼし、気候システムの理解にとって不可欠な要素である。さらに、単な る加熱量だけでなく、加熱の鉛直分布が Walker circulationや季節内振動 (30-60日振動またはMadden-Julian Oscillation)の数値実験結果に対して重要 であることがわかっている。しかしながら雲対流による潜熱加熱量を観測する ことは難しい。 Yanai et al.(1973)では、Q1(apparent heat source)を定義し、ラジオゾンデ 観測網で囲まれた領域の平均的な雲対流による加熱量を求めた。以後、熱帯域 の各地で同様の手法により対流加熱量が求められている。しかしこの手法によ る観測では、約500km程度の領域平均量しか求めることができず、領域内部の 構造つまり加熱分布を決定する要因を知ることができない。そこで、 Houze(1982)は、GATEで観測されたクラウドクラスターの構造をモデル化し、 クラウドクラスター内部の熱収支について直接調べた。その結果、対流域と層 状域の加熱分布の違い、降水蒸発、放射の効果の重要性など、クラウドクラス ターの熱収支の内容が示された。その後、ドップラーレーダー、航空機、数値 実験などによって雲対流による加熱分布が直接見積もられてきた。しかし、ドッ プラーレーダーや航空機など雲対流内の詳細な風(特に鉛直風)の観測事例は限 られており、さらにその対象はスコールラインによって占められている。 そこで本研究では、TOGA-COAREの一環として1992年11月〜1993年1月にパプア ニューギニア マヌス島で行なわれたドップラーレーダー観測データを用いて 雲対流による加熱分布を直接見積もった。手法としては、Dual Doppler解析と 熱力学的リトリーバル法を用いて、現在可能な最も精密な方法で加熱分布の見 積もりを行なった。その結果、多様な雲対流の加熱分布を詳細に示すことがで きた。対流性および層状性の雲対流は、それぞれ特徴的な加熱分布を持ち、鉛 直風の最大高度はかなりの変動があったが、最大加熱高度はそれぞれほぼ一定 であった。またこれら雲対流による加熱の大きさや加熱分布は季節内振動に伴 う大気不安定度などと密接に関わっていることがわかった。
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