三寺史夫
受け入れ可能人数:2名

1.専門分野 海洋物理学、海洋循環の力学、大気-海洋-海氷相互作用

2.これまでの研究
海洋物理学の講義を聴き回転流体というものは面白い、と思ったのがきっかけで、
海洋力学の理論や数値モデルを中心に研究してきました。以前ハワイ大学に居た
ということもあり、極域から赤道域までさまざまな経路・深度を通してつながる
「海洋の三次元的大循環」という見方が気に入っています。北太平洋における中
層三次元循環の出発点がオホーツク海であることがきっかけで、オホーツク海の
研究をはじめました。オホーツク海をはじめとする亜寒帯循環は海洋物理学にお
いて未解決な問題が多いですし、さらに気候変動や物質循環・海洋生態系におい
てもとても重要で魅力的な海洋であることを実感しています。また、南極周極流
の研究を始めており、北太平洋と対比することで海洋三次元循環の理解を進めよ
うと考えています。

3.現在の興味
◎ 大気-海洋-海氷相互作用
 シベリア、北太平洋を含む環オホーツク地域では、冬はシベリア高気圧や海氷、
夏はオホーツク海高気圧など、特徴的な季節進行を示します。この地域の気候変
動を大気-海洋-海氷相互作用の観点から、研究しています。また大きなテーマ
は、温暖化によってオホーツク海の氷はどうなるのか、ということです。

◎ オホーツク海・北太平洋の三次元循環と陸海連関システム
 北太平洋では、亜熱帯から亜寒帯に運ばれた表層の海水が、オホーツク海の海
氷生産によって重くなり海洋の中層(300-1000m)に沈み込みながら最終的に北
太平洋全体に広がりつつ低緯度に戻るという、三次元循環が生じています。オホ
ーツク海の水は沈み込むときに酸素や栄養物質など様々な物質を取り込み新鮮な
海水を北太平洋中層に送り込んでいるため、北太平洋にとっていわば心臓の役割
を担っています。一方で、亜熱帯から亜寒帯・オホーツク海へと連なる表層循環
を通した海水経路は、意外なことによくわかっていません。温暖化などで海洋表
層が変化すると、オホーツク海での沈み込みを通してそれが海の中層へと伝わる
ことから、表層循環の役割も非常に重要です。また、オホーツク海では、この海
洋三次元循環とアムール川などの河川が結びついて大規模な陸海結合システムを
形成することが分かってきました。近年ではカムチャツカ半島や北海道の河川と
海洋循環との結びつきにも注目しています。

◎ 海洋子午面循環の力学
 北太平洋の上記のような三次元循環は、亜熱帯から亜寒帯に侵入してきた海水
がオホーツク海で中層まで沈み込み、さらに中層を通って亜寒帯から亜熱帯に戻
るという、南北面での鉛直循環として捉えることができます。これを海洋の子午
面循環といいます。近年、風など表面の強制が直接及びにくい北太平洋中層にも
温暖化や寒冷化が明瞭に現れていますが、子午面循環の観点からこのような問題
を解き明かしたいと考えています。また、北太平洋との比較を目的として、北大
西洋の子午面循環および南極周極流の研究を進めています。

◎ 北海道周辺の海流の力学
 北海道は太平洋、オホーツク海、日本海に囲まれ、それぞれ親潮、宗谷暖流、
対馬暖流など特徴的な海流が流れています。しかし、その形成メカニズムや変動
は分かっていないことが随分ある、ということを最近よく感じます。観測技術と
コンピューターの急速な発展に伴って、沿岸域の細かな、しかも水産などにおい
ては重要な現象に興味を持ちながら研究をしています。

4.学生の研究
 以上は私の興味であり現在進行中のものでもあります。学生研究に関してはこ
れらに限らず、どのようなことでも良いですから、面白いと感じたことをテーマ
として選んで頂きたいと思います。論文などを読んだり議論をする中で、どんな
小さなことでも自分で持った疑問を大切にしてください。これまで指導教員とし
てお手伝いしてきた学生の研究は次の通りです。

・ 全球の塩分躍層の解析
・ 大陸棚を通した日本海から宗谷暖流への海水輸送
・ オホーツク海と北太平洋の海水交換
・ 南極周極流および北大西洋子午面循環の力学
・ 太平洋における塩分躍層の解析
・ 宗谷暖流の力学
・ 高緯度と赤道をつなぐ太平洋の子午面循環と降水の効果
・ ベーリングスロープカレントの季節変動メカニズム
・ 黒潮‐親潮混合水域の準定常ジェットと水塊形成機構
・ オホーツク海と北太平洋の熱塩循環
・  海氷バンド形成機構
・  北海道オホーツク海沿岸帯状雲の形成機構
・ 沿岸ポリニアの数値実験
・ 潮汐混合による時計回り循環の季節変動メカニズム実験
など

Course in Atmosphere-Ocean and Climate Dynamics